900918
街のヘソたる、プエルタ・デル・ソルからプラド美術館までは 想像していたよりも距離があるようだ。 夜行明けの身体には、暑さがコタえる。
歩く道すがら道路わきにはたくさんのライブ告知のポスターが貼られている。 こういう風景を見ると、ホッとしてしまう、自分でも不思議なくらい。 幾枚ものポスターが重なるように壁を飾り、 雨に晒され、 所々引き裂かれている様子さえ わたしのなかの何かに触れる。 こんなとこに美意識もってどーすんだぁっっっ。
その名前を見たことも聞いたこともない、多分地元のバンドなのだろう、 “Radio Futura” というバンド (と思われる) のそれがかっちょいい。 結構人気モン風だ。なかなか psychedelic でセンスがいい。気に入ったです。 __てなことを考えつつ……やっとプラドに着く。
マドリッドの日中の太陽の光は、白い。 その白い陽射しが白い建物に照りつけている。 ふーん、思ったより小さいんだ、というのが第一印象か。
「えっっっ?!」
さすがに、驚く。
いきなりピカソの 『ゲルニカ』 の素描というか、
ラフスケッチのようなもの、が出てくる。
“ゲルニカって、確かプラド美術館の別館にあるんじゃなかったっけぇ?”
なんとなく不思議…と思いつつ進む。
なんと、すぐ後ろに本物の (←あたりまえだ) 『ゲルニカ』 が現れ二度ビックリ。
一部屋まるまる使って展示されている。
ただ。どうしてここにあんの?
別館にあると思ったのは、じゃあ思い違いだったのか?!
わたしは決してピカソは好きじゃない。 けれど、間近にみた 『ゲルニカ』 は結構ショックであった。 先に何枚ものスケッチを見てきたのも大きい。 まるで墨絵、みたいだ、 『ゲルニカ』 という作品は。
よくよく見てみる。 塗られた下に、採用されなかった輪郭の跡が透けて見えもする。 ピカソが如何に推敲に推敲を重ねた上で、 ラスト (完成) の表現に至ったかが伝わってくる。 デッサン等をみても、(よく考えたら当たり前の話なのだけれど) 彼が如何に画家としての基本素養を ちゃんと身に付けた上でのデフォルメだったのかがよくわかる。 思いつきなんかでは全然ない、のですね__あの極端な表現はね。 煮詰めに煮詰めた末の必然だったのだ、と初めて理屈でなく解った (それと好き嫌いは別だったりするんですがね)。
結局のところ、 『ゲルニカ』 にはけっこうヤラれてしまった気がする。 中でも、幼い子供を失った母親の深い嘆きが強くクルのは何故なのだろう? オンナにとってそれはかえがたい悲しみで、 同時に他者にとっても emotional な何かを 最も与えやすい普遍的モチーフなんでしょうか (←他人事っぽい視点)。
なお、ピーは手相をどれもしっかり描いている。
作品の真正面では美大生らしい数人の男女が座り込み 真剣な面持ちでなにやらディスカスしているようだ。
しかし。
進めど本来プラドにあるはずの超有名な作品群が
全く出てこないのは、なぜ?どうして?
またしても不安がよぎらずにはいられない。
でもって、それは当たってたりするんですよ、これが。とほほ…。
残りはスペイン人の (わたしには) 名前も知らぬような画家ばかりで
この美術館は終わった__
ひょおおぉぉぉぉ〜っ(風の音)
やはりここは別館。
じゃ、本館?は何処やねん??
必死で探す。 __辿り着いたら炎天下のなか、長蛇の列が出来ている。 別館は並ばずに入れたのに…。 が、いまさら諦められず、ゾンビと化して入場を待つ。 言葉少なになるふたり。黙っているのが一番ラクなのだ。 信じられないのは、欧米人のあのタフネスさ。マジに羨ましい。 どうしてこういう時にああも平然と何もないように 大声で笑い話していられるんだろう。 化け物を見るような眼で見てしまう。 やっと順番が来たとき、一時間ほど経っていた。
わしらの受難はまだ続くのであった。 なぜかミネラル・ウォーターの 1.5 lt のペットボトルの持ち込みに駄目だしされる。 な…なんで?!命の綱なのに……コレ。涙がでそうだ。 誰も、なかで飲むなんて (まして絵にぶっかけるなんて) 言ってないだろう〜が。 ダメ? と念押ししても答えは、NO ! だと。 仕方ない。入口の前でふたりして残りを飲み干す羽目になる。恥ずかしいよ〜。 でも。飲まずに捨てる、という選択肢はもとより我々にあろうはずはない。
おまけに、入場してから気づく。なんか見覚えのあるチケットだな…。
なんと!この二館は共通チケットらしい。一枚で両方ともに入れるようだ。
再び、400 pts 払ったわしらっていったい…。またもや疲れる。
こっちは当然、ばかでかい………そりゃそうだろうな。
ふっ (醒めた笑い)
(その後、『ゲルニカ』 はまたもや別の場所に移動しているらしいですが)
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チケット | 400 pts | プラド美術館・別館 |