900928
ルツェルンは、“中世都市”の姿を今に留める町として有名なのだそうだ。 旧市街は城壁で囲まれている。 家々は白い壁に可愛く小さな窓をいくつもつけている。 そして、赤茶色した屋根が全てを覆っている。 そんな秩序のもとで全ては統一されているかのようだ。 町のなかを川が流れ、そこにはやはり同じ色した屋根をつけた橋が架かっている
__まあ、ガイドブック風にいうならこんな感じでしょうか。 さて、城壁に沿って歩いてゆこう。
幾つかの塔には上まで上ってもみる。 日本からの観光客も何人かみかける。彼らはあの、あの、氷河公園にいったのだろうか…。 まあ、塔のなかは人気がなくガランとしているので、 いろんな使われ方を案外してるのかもしれない気もしますが、 けっこう危ない系も含め…もごもご…ごほっ。 最後に上った塔は頂上まで行くと外へ出られる仕組みになってました。
出てみると景色はよい。 ルツェルンの、所謂“絵になるポイント”が このアングルから見ることが可能になってる。 そろそろ夕焼けが白壁をうっすらとオレンジに染め始めている。 確かに、赤茶けた屋根と白い壁をもつルックスの町は夕焼けがとてもよく似合う。 それはかなり美しいものだ。 幼い頃みた童話に出てくる町には、こんな感じのところは必ずあった。
が。ルツェルンは城壁を境にして町の性格が極端に違っている。 その内側である片側は、観光的な中世都市 (実云うと、私にはどうしてもそのように思えなかったのだが。 ここでは一応そいうことにしておきましょう。いいかげんなオノレ)。 もう片側、つまり城壁の外は、ごく普通の郊外の住宅地のようだった。 それも、外側へ出た途端、通りを隔てた所からいきなり、であった。 これを現金といってはいけないのかしらん?
こういう両方を見てしまうと、 やはり意図的なものなのかも…と思ってしまうのも仕方はあるまい。 何処もなかなかしたたかである。 すると、観光客 (私のことですね)は旧市街に納得して、その外側に何があるのかなど考えもせず、 今尚残る中世の匂いに浸って帰ってゆくのが礼儀なのかもしれないな。 暫く城壁の外を2人して、“なるほどなぁ”という感じで歩く。 城壁が今も 国境 (ボーダー) であることには変わりないのであろう。
当たり前だけど。 何の変哲もない住宅地見てても面白くもなんともないので、また城内へ戻りウロウロし始める。 カペル橋に着いた頃には夕方で暗くなり始めていた。 橋の先には城壁の塔もひとつ首を出している。
ところで。 カペル橋の屋根 (ちなみに、屋根つきの橋で有名だったんです、ココ) の天井には、絵が順を追うようかけられている。 歩きながら順に見てゆくと、一つの絵物語りになる仕掛けのよう。 これが、結構、エグい!! いかにも中世ヨーロッパ??という オドロオドロしい猟奇的なストーリーと思われる (推定)。 絵が、またスーパーリアリズムとスーパーそんなことあるか?イズムの 両方併せ持った (矛盾してますね)、やはり中世ヨーロッパではある (いったい、この時代を何だと思ってるんでしょ、ヒドイ…)。 日本でいうと、丸尾末広か花輪和一のノリ (かなり乱暴な例えは承知しておりますが)。 こんなものをイチイチ並べて見せなくてもよい気もするのだが…。 おまけに、ところどころ天井には絵も含め蜘蛛の巣はってたりもしてウケます。
まぁ、時間帯はあるかもしれない、しても。 そこそこにキレイ、でもそれだけ?という気がしてしまう。 それ以上ではない、少なくとも私たちにとっては、だけど。 だから他の人の感想は全然違うかもしれないし、違って当然です。 あくまでこれはルツェルンに対する“私見”です。
ただ、暮れはじめ川沿いの店々全てに灯りがともり始めると、 それは水面に華やかな色の帯を形つくりはじめる。 その様を眺めていると、 何故か 『大阪ラプソディ』 の出だしのフレーズを口ずさんでしまう自分が 自分でも理解できない。 そんな向こう岸から唄が風にのって聴こえてくる。 聞き覚えのあるメロディ。 思い出そう。 __Neil Young の “Keep on Rockin' in the Free World” じゃん。 誰かがアコギ弾きながら唄っているらしい。
もう完全に日も落ちてしまった。
その後不幸なことに火災により、カペル橋の屋根は焼失してしまったと聞きました。 残念ショックでした。当時の感想とはまたこれは別物