901006

ブルージュ、天使の詩 ?

そりゃあ、2ヶ月も旅を続ければ色々なことが起る。

文字通りオーマイガーな事も多い。 が、神サマ(?)もそんな目にばかり遇わすのにもさすがに気がひけるのか 時には信じられないヘブンリー(by 花田裕之 …違うってば) なプレゼントをくれたりもする。 そして、それはいつも思いがけないかたちで。
“ワリィワリィ これでこないだのこと、カンベンしてくれる?”
とかいいつつウィンクのひとつでもしてるのかもね。

ベギンホフの修道院の塀の中へ一歩足を踏み入れると、 当然ではあるがそこは静寂が支配する世界へと変る。 そこかしこには Be Quiet の表示がある。 私はまたしても無い智恵絞って考える__ なぜに洋の東西を問わずこういう祈りの場は他所と空気が違うのでしょうか。 日本のお寺の本堂も夏でも涼し〜ぞ (→これは天井が高いからかもしれない)。 大概温度も少し低いし。

美しく手入れされた芝生の中に ポツリポツリと適度な間隔でもって樹木が植えられている。 それらの樹木は豊かに繁りやがて朽ちて舞い落ち、同時にまた新たに繁る、 そんな終わりないサイクルを黙々続けている。 毎日、生まれては死に、死んでは生まれということなのかもしれない。 そんな わりとどうでもよい考察をよそに、 芝の上には朽ち落ちた黄色い葉たちが緩やかなグラディションを造っている。

ふとみやると芝の中に造られた小道をシスター達が列をなして歩いている。 まるでヨーロッパ映画みたい♪→オオボケ
かと思うと、おおよそこの場に不似合いなボロい建物が。 なにやら改築工事中らしい。が、かなり古びている。

なんじゃ、こりゃ?
まっ、いいか。ついでに入ってみよう。

ケルンよりの使者

えっ?! なにっ?!    声が聴こえる…。   それも唄う声だ。

どうやって信じろ、というのだ。この状況。 神様ヘルプ (by チェッカーズ…だから違うっていうのに)。 なんだ、なんだ、あの揃いの衣装着て口をパクパクさせてる坊やたちは!

なんてこった…。マジかよ…。 聖歌隊のコンサートの真っ最中じゃねぇーかっ。

ボロすぎて判らなかったが、ここは聖堂だったらしい。 けっして広くはないが(というよりはっきりいって狭い) その中をボーイソプラノが木霊して響き渡る。 Natural Echo というやつ。 少年合唱団なのだろ〜か__。 いや、後列には数少ないが青年とオヤジら成年の部らしき団員も見うけられる。 多分、少年の部OBなのかもしれない(推測)。

置かれているパンフレットを手にとってみる。 曲目リストも載っている。はてさて、今はどの曲なんであろうか?? パンフによると、Cologne Cathedral Choir なる聖歌隊御一同さまらしい。 ケルン…この名前に懐かしくなるのはなぜ?  なんと、一丁前に (失礼しました) ヨーロッパ・ツアーを組んでいて、 その一コマに偶然ぶちあたってしまったらしい。 どうりで素人にしては巧いと思った。 が、時折音をハズしもするので腰が抜けそうにもなったんですがね。

しっかし。こんな偶然あんだねぇ〜。いやぁ、感謝、感謝…。
果るか遠国(とつくに)、 中世の香り残す (→こういう時だけいきなり都合よくそういうことにしてしまう奴) 街のなかの教会で ボーイソプラノの賛美歌を聴けるやなんて、ねぇ。 夢みたいだなんて陳腐なこと思う。

いつか地上に降りるまで

参った。降参します。
やっぱりボーイソプラノって、美しぃ〜ワ。 まあ、出来すぎのシチュエイションの効果も大きかった、とは思われますがね。 唄ってない時のコイツら、…いや、少年達は ほんっっっっとうに落ち着きのない (無さすぎる) フツーの少年達である。 単なるガキンチョ、というかなかなか悪ガキの部分も覗かせる。

隣の子とヒソヒソ話していたり (おい)、
キョロキョロしてみたり (おいっ)、
果ては欠伸してみたり (お〜いっっ)。
…と、まあツッコミのひとつも入れたくなるぐらいのもの。

それが。
しかし、ひとたび歌いだすと天使に思える。 この、あまりの落差は感動的ですらある。 そして、彼らが天使でいることを許されるのは変声期までだ。 その いがら は背中の翼をも傷つける。 その後は、下界に降りねばならない。 いつか必ず終わりが来ることを予め約束されている。

だからこそ あ〜も美しいんっすかね。

一旦中座して再び戻った時、ラストナンバーの“Ave Maria ”の途中であった。

天使は、その純白(しろ)さゆえに色染(いろつ)き易いのではないのだよ。 汚れに対する抵抗力が弱いのでは決してない。

天使は、 その純白(しろ)さゆえに、 その慈悲(つよさ)ゆえに 全てのものを反対に浄化してしまう (怖さ?がある) のであるよ。 その純粋さはもはや濁りさえ濾過してしまうのだ。 それは空気感染する恐ろしい(?)波動なのである。

夢から醒めて

芝生の前でぼんやりする。コンサートが終わり教会から出てきたばかりだ。 辺りは静かでいながら何処かさざめいた空気が漂っている。 シスター達は歩きながらおしゃべりをしているよ。 その向うを、いましがたの天使達、改めガキンチョ達が進んで行く。

歩くもの、走り行くもの、それぞれが気持ちよさそうに寛いでいる。 そんな坊やたち (はっきり言って、かなりウルサイ) と同じ路を 成年組 (この場合オヤジ系は無視したい、気分としては…) がふんわりとした、 だけど凛とした佇まいで共に歩いている__。 軽い笑みを浮かべながら仲間と語っているその光景は結構感動的かもしれぬ…、 畳の国から来た人間にはね__。

さすがに成年組…というか青年達の中には走る奴はいねぇが。 殆どヨーロッパ (だからここはヨーロッパだっつ〜の) の男子寄宿校の世界だもん。 その中等部と高等部一同、黄昏のなか寮へ戻るといったノリでんナ。 ベルナールとかヨハンとかいうヤツがいたりすんの、それで (→国籍も何もごちゃごちゃにしてる奴)。 『11月のギムナジウム』 という大昔の少女まんがのタイトルをふと思い出す。

人間はあまりにできすぎの光景にでくわすと 白昼夢とでも思った方が楽になることがある、 じゃねぇーと パニクんだよ。

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