900922
ここは、探す手間が省ける点では 非常に助かることこのうえない。
一応目指す方向へと歩いて行けば、アッチから意思表示してくれるから。
MUSEU DALI ―― ダリ美術館の話ですが。
赤と灰色を混ぜ合わせたような色合いをした門。 その門壁には、亀(?)みたいなものがボコボコと埋めこんである。 壁の上には、卵がぐるりと取り囲むように並んでいる。 …なんじゃこりゃ。
門を入ったら入ったで、正面前で “考える人” ならぬ “考えるタマゴ” が 貴方を迎えてくれるだろう。
建物2階のバルコニーには “人生いろいろ” としか形容できぬ マネキン(のようなもの?)が 何体か並んでいる。
視線を地表に下ろすと “笑うモナ男(お)” としか、 もはや私には名づけるしか術のない デカいオブジェもある。
ここはヨーロッパの美術館で (己がそれまで訪れた中では、だが) 初めて館内写真撮影禁止であった。
建物の造り、内装等、凝りまくり (すぎ?) である。 美術館それ自体がもはや ビックリハウス 化している、という意味で面白い。 まるで何処かに宝物が隠された “宝島” という趣でもある。
作品には、奥方のガラをモチーフにしたポートレイトも多い。 なにか観ているとある種ひどく納得できる、そんな絵だった。 あふれんばかりに描かれているその姿を眺めていると 風変わりだがとても強い絆で結ばれた二人のパートナー・シップを “なるほどなぁ…” と思わせてくれるといえばよいのだろうか。 その根拠を感じさせる説得力(魅力)を描かれた彼女からは とても強く感じられたといえばよいのだろうか…。へんな日本語だ…。
しかし。
artist にとっての Muse になるというのは、どんな気持ちなんでしょうね。
わりと全体を通して “過剰” というイメージの館なのだが (そう、美術館というより、“やかた” という方がしっくりくるです)。 ひとつだけ、全く異質といっていい世界を持った部屋があった。
手前まで来たときに、 “ん?” と思ってしまうのだ。 何にもない まっしろな からっぽ といっていい空間がそこにはある。 なのに、強烈に何かを発しているのが伝わるのである。 この部屋ごとが、作品なんだろう…と思い近づいてゆく。
が、思わず私の足は止まってしまった。 直前で躊躇わせる空気の壁のようなものを感じてしまったからだ。 目の前にして、これ以上進むことを 身体の何処かが躊躇してしまう。 断っておくが、先にも述べたようにがらんとした何もない部屋でしかない。 勿論、その入り口に障害物も無ければ扉にあたるものもない。 どうしてなんだろう…とこの見えない?壁のようなものに不思議な気分。
それでもなんとか思い切って入ってみると。
何なんだろう…
あきらかに空気がここだけ違う。
温度差さえ、あったと思う (気のせいじゃない)。
次の瞬間、予感がした。
まさか !?
でも、彼なら?やりかねない。 この “敬虔と巫山戯(ふざけ)” 、という 両極端な要素が同居している如き部屋は、そうに違いない (相変わらず、この根拠のない自信…)。
何か、先ほどから独りでこの部屋の中央に立ってると 背筋にくるものもあったのだ、実を言うと。告白してしまいますが。
でも、とはいっても、まさかこんなことを実際してしまうものだろうか…… 自分ひとりで抱えるにはいささかキツすぎるシチュエイションの為 友人にさすがに声をかけてしまう。
『どうやらこの部屋?は ダリのお墓だよ。 絶対にそうだ』
いきなり理由の解からんこと言われて、さすがに彼女も驚いたようだった。 最初はまさか…といった様子を見せる。 ただ、なおも訴える(^^;)こちら。 部屋をよく見るとそれでも納得するものを彼女も感じてくれたらしかった。
私は何かに急かれるように、けれど注意深く がらんとした内部を見渡す。 考えようによっては、それらしい?プレートつうか表示も見つかった。
もちろん。
何ら、裏づける証拠は無い、残念ながら。 面倒くさがり屋で大雑把な性格もあって、確認はその後していない。
でも。 確信してるもん (違ったら、それはそれだけのことだし…って、無責任なヤツ)。
(追記。 かなり経って一応調べてはみたのだが、 そのやり方が悪かったのか、結局答えは得られなかった。以後そのまま)
本当に___彼は一生賭けて “大いなる冗談” を 大真面目に 全速力で 創り続けたのだろうか?
(タフな御仁…)
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