900921
ピカソ美術館を後にして、一旦ランブラス通りに戻り、
海へと向けて歩いている時だったろうか。
前方から中年の日本人風の男女が歩いてくる。
夫婦連れのようだ。ダンナのほうは近づくといきなり叫んだ。
「日本人?!」
これが、また結構デカい声なんだよね。
何なんだ、と思いつつ頷くと、リズムよろしく自分たちを指して
「日本人!」 と答える。
そりゃそうだろ。
日本人にしかみえないルックスで日本語喋ってんだからさぁ、
とかこっちは思いもするんだが。
彼はまた、たたみかけるように 「何県?」 だか尋ねる。 呆気にとられつつも、どこだのそこだの答える。 おじさんは間髪いれず自分を指差すと 「○△県」 だか、一声叫んだ。 そしてなにやらいうとまた歩いていった (もう覚えてないです、まったく。でもサムアップのポーズまでしてたような気がするが)。
……何なん、あれ……?
きっと海外にきてハイになっていたんだろうけど、 まるで日本人が片言の日本語を喋っているような、へんてこなノリではあった。 しかし…同じ関西人ってことで仲間とでも言いたかったのだろうか…? 傍らの奥さんはちょっと困ったような笑顔で黙っていた。 オヤジのあまりのハイテンションぶりに困っているようである。わかるような気もする。 でもまあ、微笑ましいご夫婦でした。
海岸までくると、そこはもう地中海だ。ヨットが停泊している。 ここは何処?!の世界だ、ったく。 海岸線に沿って歩き出すと、レストランのようなもの出現。 その屋根にはザリガニ?の化けモンのようなオブジェが乗っかっている。 友人によると、 バルセ五輪のマスコットのコビくんを手がけたイラストレーター氏の作品とか。 可愛いのか否かにわかに即答できないオジジェではあった。
コロンブスの像だ。ごそごそとチェックを入れる。 中に入れるのかな、とかなんとか。おまえはコドモか?!
さて。この像から見て、向って左の小高い丘がモンジュイックの丘である、という。 丘というより山だよなぁ…などと一瞬思わんでもない。 が、丘というからには、きっとたぶん丘なんだろう。それなら怖れることもあるまい。 ケーブルだかなんだかあるらしいけれど、と・う・ぜ・ん! 歩くことにする。 しかし…下から見るとやはり結構小高い気がしないでも…。 いやいや、気のせいに違いない。
……軽くみくびっていたが、けっこーキツい。 登りがえんえんひたすら続く風。
時々立ち止まって街を見下ろす_
すると、かなり急な坂が 横の道から下へと続いていたりする。
なんか… とんでもないことしでかしてんじゃなかろうか……
見かけるのは、夕方のキビシイ陽射しを軒で避けながら のんびりと世間話に興じるそこらのジジババばかりだったりする。 同じルートを歩いているツーリストなんて誰ひとりいやしねぇー。うううう…。
ただ。何処かひどく懐かしい気持ちにかられる。 時折り山あいの道は ひどく日本のなんてことない風景を思い起こさせることがあった。
…どうでもいいけど。 全然着く気配すらない。 そのうち車道を歩く形になる。 本当にこの方向であっているんだろうか?とかさえ思うようになる。 最後はもうナチュラル・ハイ状態で我ながら、けっこうコワい。 山ん中をカーブを描きがながら続く車道から下を見下ろすと、 自分たちが“あんなところ”からこの高度まで来たことに眩暈を起こす。
ここを行けば絶対に辿り着けるはず、 という何の根拠もない自信に支えられて、やっと目的地に着く頃には 結局一時間以上かかっていた。もう夕方だ。
白を基調としたその建物はシンプルではあるが垢抜けたセンスの良さが漂っている。 もう6時をまわっている。CLOSE していたらどうしよう。 受付で尋ねると、まだ大丈夫らしかった。危機一髪! セーフ!!といったところか。 丘を登った疲れも忘れ、ウキウキして入場するのだった。
Fundacio Juan Miro___ミロ美術館
昔、ミロが好きだった。いつのまにかそんなことも忘れてた。 このミロ美術館のなかを歩きながら、それを思い出した。 館内は時間帯のせいがあろうが、数えるほどの入場者数だった。
静かだけど風通しのいい雰囲気の館だなあ、と思う。 彼の作品は、そのあまりの無垢さに驚かされる。
そしてそれはあまりに強烈すぎて 伝染してしまいそうなところがある。 また、彼の作品からは 常に音楽が聴こえてくるような気もした。
そのバイオグラフィのパネルを見て、 90幾つまで元気な子供のようなジジィだったことを知る。 その生涯を簡単に追ってみると 一生“枯れ”とは無縁のエネルギッシュな人物でもあったよう。 なのに、まるで生涯少年だったような透明感が何故か矛盾なく同居しているようにも。 不思議な気もするが、多分生きているのが楽しくてたまらなかったのだろう。
美術館の二階に中庭があり、そこからはバルセの町が一望できる。 あたり一帯はすっかりオレンジ色で染められてしまっている。 彼方にはよく見ると、“もろこし村”も見える。
petty cashbook | ||
---|---|---|
チケット | 400pts | Fundacio Juan Miro |