901001

神様の賽子

しかしながら。 何故に我々ばかりこんな目に遭うのだろう、と思わずにはいられない。トホホ。

のんびりした1時間あまりのチューリヒ湖上遊覧を終えた後 (勿論、ユーレイルパス有効)、 再び小雨の中チューリヒの町を歩き出す。

地図も持たずではあったものの、 幸運なことに歩く道すがらに 目的の場所を見つけることができた。 これも神のお導きであろうか(?)。

ここは、聖母寺院 -Fraumunster-。 12〜14世紀にかけて建設されたという ゴシック様式の建物だそうです。 マルク・シャガールによるステンドグラスがあるらしい

__どうでもいいのだけど未だ雨は止まぬ。 勿論 (何を威張ってるんでしょうか?) 傘など持たない。 雨具も羽織ることなどない (ひとえに面倒くさいからだけの理由です)。 ひたすら霧雨にその身をさらすのみ。

(はやく 止んでくれっっっっ!!!)

寺院内は薄暗く、祈りの場特有のひんやりとした襟をただすような空気だ。 訪問者は私たちとあとはもう一人程度だったと思う。

さて。くだんの作品はすぐ目に飛び込んでくる。 蒼く透きとおる光の中のそれは いわゆる“シャガールらしい”といわれる世界のものだった (←気をつけたい陳腐な表現集所載における典型ですね、こりゃ)。 とはいえ、確かに彼の作品から匂いたつイメージにステンドグラスはよく似あう気はします。 『富嶽百景』 の冨士には月見草…ではありませんが。

__が、ここではそのステンドグラスについて記したい理由ではありません。

もはや シャガールどころではないらしい

教会の聖堂のすみに簡単なスーベニ−ルのコーナーが設けてある。 といっても、絵葉書程度のもの。 担当の女性が1人そのテーブルを前に立っている。 奇しくも、我々訪問者3人もその場に居あわせていた…(推理小説みたいだ)。

まさしく。
そのときだった。
我々が床にアレを発見したのは…。

またしても、アレは紙幣風の紙で、
(※ A JOURNEY MUST GOES ON 参照)
そんでもって、それはそのお土産コーナーの真ん前に(静かに)2 横たわっている。 何故、担当の彼女は気がつかないのだろう、とそのことが不思議なほどだった。 もう一人の訪問者たる女性もすぐ間近にいるにも関わらず未だ気がついてないようだった。

顔を見合す。 2人とも困惑しきっている。 ……勿論、もちろん“そんな”ことは考えてはいないのだけれど、一応。 ただ、目のやり場に困ってしまうのだ (今から思えば、そこで困ってしまった自分たちが…セツナイ、というべきか)。 彼女らのうち一方でも気がついてくれれば、それでこちらも(?)ホッとできるのだけれど、 何故か!!2人して目の前のソレに“信じがたいことに”気がつかないのだ。

何故に我々は繰り返しかような目に遭うのであろうか。

テンションは高まる。 2人とも一瞬 (あくまで一瞬、チラリ、とではあるものの) 考えてはいけないことを考える。 __が、当然すぐに打ち消す。

だいいち、もう一人の訪問者 __彼女はそこで物販されているものを品定めしていたのですが__ も実は気がついているのではないか??、 担当者の女性もそ知らぬ顔しているけれど当然気がついているのではないか?? ……じゃ、何故に2人して気づかぬフリをするのか?

誰だ、本当にこんなところへ落とすのは

答えはひとつ__ここが教会だからだ。 ……神の御前でそんなトンデモナイことできる理由なかろう。 もしくは、考えつきもしないであろう。

もしかして、と2人は思う。 これは神様が私たちを試しているのではないか (何をやねん…)。 これは偶然ではない。 でなければあの思い出すのも情ないバルセロナに続いて何でこんなことが起るんだよっっ!!、ブツブツ。 それも明日のパンにも事欠く(!)ような私たちに対して…(→ジャン・バルジャンか、ワシらは…)。

やはり、彼女たちも気づいてはいないのだろう。 が、これは私たちと神サマの間の問題ゆえに 気づいていようがいまいがもとより関係ない存在なのだ?!

さぁ、どうする……?!
もちろん、そう (そう、っていったい…) と解ったならば、答えは決まっている。 一瞬の気の迷い(?)で一生を棒に振るなんてマッピラゴメンだ。 こちとら “祟りの本場?!”の國から来た2人だ!!
(しかしながら。何故に神?が我々にこのような企みをされるのかは、一切不明ではある)

私たちが心の平安を取り戻した、ちょうどその頃 (情なさすぎる…)、 今更のようにもう1人の女性がその紙幣に気づき拾い上げた (ちなみに金額は不明、というかスイスの貨幣単位すら把握してなかったらしい。いやはや)。 そして、売場担当の女性にそれを渡した。 私たちもほっとした。 これにて一件落着であった。

……私たちはパス、したのだろうか。

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