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SITTIN' ON THE FENCE 2 - 1990.10.03 -

もちろん、興味深いところだった。行ってよかったと断言できる。 自分はあまりに無知であり、いろいろ学ぶこともできた。 建物じたいが醸し出す匂いも好きなほうだったし。

ただひとつ気になってしまったことがあった。 何処か “東” は “悪” であるという 単純な決めつけが感じられてしまうのだ、はしばしに。 結果、 “西” は “自由” であくまで “正しい” … みたいな部分が透けて見えてしまうような。 東側から来た人間は、西によって救われるみたいな… 上手く的確にいえないんですが。

それが、本当の意味での “第三者” というか “部外者” である 日本人(ヤパーナ)の私には喉にひっかかる小骨のようなものを残してしまった。

誤解を招かないようしたいのではっきり言っておきますが。 別に東ドイツを肯定しようとか、そんな事では全くありません。そうは思ってない。 問題が多くありすぎたことは確かなのだろうし、だいたい私は何も知らない! それに、正直、この壁を越えてきた者達 (越えようとした者達) の思い、決意 ――何故命の危険を冒してまで国を捨ててまでこうせねばならなかったのか、 というあまりのヘヴィネスの前にはただ立ち尽くす術しかないのだし。 それを前にして何も語るべきではない、 そう厳粛に思うのは絶対の事実なのだからして。

それでも。 まるで東ベルリン(東独)にいる者の全てが哀れな犠牲者であり、 彼らがみな一日も早く西側へ来られれば…という願いは 実は別の意味で怖いのではないか?――という気もしてしまうのだ。 深読みしすぎ? きっとそうだろう。 その一点をのぞけば、 繰り返すけれど、学ぶべきこと多い、素晴らしいところだと思う。

(それに。
『おまえは、東独の実態を知らないからンナこと言えんだよ! 当事者だったらこういう風に誰でも思うんだよ!、わかる?』
とか言われれば返す言葉などもちろんない。)

rights for the people

もしかしたら、ここのスペースは 人間の “権利” _例えば、人権_の持つ尊厳の 唯一無比の重要性を訴えているのだろうか。 そして、それは何者にも侵すことは許されないはずである、と。

例え。
どんな “正義” の名のもとになされる場合も、それは許されないのだから、と。

その権利が踏み躙られている最もヘヴィかつレアなケースの “ひとつ” が このベルリンの壁ということなのかもしれない。

でも。 こういうスペースがある種、同世代的な層によって運営されているのは 羨ましいことのようにも感じた (ように一見見えるのだけど、現場の仕切りは。実際はよくわかりませんでした)。

彼と彼女とボーダーと

カフェ横のショップで絵葉書を幾葉か選び購入する。 もちろん、観光名所ものなどここには置かれてはいない。 モノクロ、カラーともにモチーフは “ベルリンの壁” にまつわる時間の断片。

なかには兵士を扱いながらも、 そこにいるのは敵ではなく通じあえるはずの同じ人間なのだ、 という想いが伝わってくるものもある。

すると――今にして思えばなのだけど、 みなちゃんと理解った上なのかもしれない。 私が勘違いしていだだけなんだろう。不安を感じることなんて何もなかったのだ。

建物を出るともう6時近かった。

ヤバイ…… なぜならホテルの部屋鍵は 友人がもちろん持って帰っている。

ホテルの建物の表玄関の鍵は 何時だかに閉められるのだった、 忘れていたらしい。

よって、 玄関と自分たちの部屋の 両方の鍵を持っていない私は 下手するとホテル自体に 入れなくなる危険性がある (というか高い…)。 展示をみている途中で やっとそのことに気づくという…。

あいも変らずのノンキさんらしい。

当たりはもうかなり暗い。 通りにでて見ると、兄ちゃん達がけっこうたむろしている。 初めて気がついたが、博物館の前の通りを挟んだ向側には オシャレなマジで垢抜けてセンスがよいカフェがあって、 なうなやんぐ(死語)で賑わっている。

この周辺に来た頃からずっと思っていたのだけれど。一種何処かスノッブな町のような気がする。 ボーダー付近だったせいも大きいだろうが。 (チャーリーは国境、そうボーダーだったのだ)

どことなく、いわゆる “普通” の街、とは漂うムードが違う。
何処か “non ! ” の空気をもっている――そんなところだ。
面白そうな街だな、と思わせる引力のようなものをもつ町だ。

存在を知るのが遅すぎたけれど、 余裕があればこういう界隈でゆっくりしてみたかった、とふと思った。 いまここで好き勝手にやっている彼らの '90.10.3. に たぶん私は同世代的興味を覚えていたのだもの。

しかし。その一日ももう暮れてゆくが…嗚呼…。

この後の道中からホテルへの帰還 (ちなみに歩き)、そして戻ったら戻ったで てんやわんやの大騒ぎになるんだけれど…それはまた改めて…ということで。

つうか…てんやわんや、こそ死語だろ>おのれ

⇒ SITTIN' ON THE FENCE

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