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SITTIN' ON THE FENCE - 1990.10.03 -

チェックポイント・チャーリー跡の出店が建ち並ぶその通りを少し行くと。 何とはなしに気をそそられる店があるな、と思った。 よく見ると、そここそ “壁博物館” であった。 冗談みたいな話だと我ながら思う。が、本当だった。あらまぁ。 名前からそれなりに公共施設風の普通?の建物を想像していたんで。

ビックリ。およそ外観はそんな風には見えない。 ごちゃごちゃとした店、といった感じのほうが近い。 何処か独特の “におい” を持っている…そうあの匂い。 このニュアンスは言葉にできない、そんな表現力わたしにはない。

個人的にこの手の “におい” は好きだったりする、だいたいの場合。 まさかでも、私好みの匂いを放つこの店 (ではないんですが) が 壁博物館であるとは予想だにしなかったですが。

ただその二つがイコールで結ばれた時の感想は “なるほどね” だった。ストンという感じで至極納得できた。

結局、友人は疲れもあり一足先に宿へ戻ることになった。 彼女を U-bahn の駅 KochstraBe の入口まで送った後再び博物館へと戻る。

そうして、その入口の狭いひと一人通るのが精一杯といった塩梅の 階段を上がっていった。

壁博物館 - Haus am Checkpoint Carlie -

ビルは3〜4階建てでかなり横幅の広いものだった。 その左端にまるで、ライブハウスのような入口がぽつんとある、という感じ。

チケットを購入して先の狭い階段をのぼる。 階段脇の壁には、いろいろなビラやチラシが貼られている。 展示フロアはかなり広く、明るくゆったりとしたつくりになっている。 そして、フロア右端から出口へ下りる階段が設けてある。 その階段をつかって1階まで下りると、出口横にはカフェスペースが隣接されていた。 ゆったりと寛げる感じでかつ こじゃれた感じのカフェがそこにはある。 また、ちょっとしたグッズ・スーベニールのショップにもなっているようだった。

訪問者はかなり多かった。 解る気もするし (実際の理解とは別物ですがね) 、 あのお祭り騒ぎのなかで あえて “ココ” へ来ようという価値観の人間が多いことは なにか嬉しくもあった。同時になにかホッとした。 何故なら表裏の関係になっている気がしていたからだ、と思う。

さて、自分の場合。 ここでは英語による説明書を読むしか理解の方法はない。 ドイツ語ができたら別だろうが、あいにくダンケシェーン程度しか知らない。 これはやはり頭をかなり酷使するのでハードな作業であった (情なさすぎ)。 私が入場したのは、たしか夕方4時過ぎ辺りだった記憶がある。

壁についてなんかなにも知らなかった

1961.8.13. ――東西の壁が作られてゆく過程。 ベルリンにおける、米・英・仏・ソの勢力分布図。そこからみえるパワー・バランス。

そして。壁を越えようと試みた数多くの者たちの記録・体験談・写真。 および、脱出の際に使用したと思われる道具等の展示。 ――それらがパネルを多用して順を追うことによって 素人でもおおよそのアウトラインを掴めるよう上手く構成されている。

そこにはある種の意図であり (出発からあわせもってしまっている?)限界も あるような気もしたのだけど、それはまた別の話で。 とにかく上の展示方法はひとまず助かる。 私のように、実のところ、壁の歴史に無知な者にとっては またとない学びの機会ともなりえたから。

その外郭を把握することにより、ひとつのモノから受取ることができる情報量は ずっと増えるものだから、実際。

ひとつの事実があるとしても、 なぜゆえそこに至ったのか、という行間の部分まで読みとれるようになるのだ。 しかし…脱出成功者の体験談は殆ど、事実は小説より奇なりの世界だった。

one for all , all for one

また一画では、〜1989.11.7 に至るまでの ドキュメンタリ・タッチのビデオを上映していた。 もちろん、全編ドイツ語だ。 が、ひととおり展示パネル等を見た後では、 たいしたもので何となく解ってしまったりする。 だいたいのナレーションの内容も推測できてくる。 言い換えると、それほど丁寧な館内構成がなされているといえた。

ビデオのラストシーンは “CONCERT FOR BERLIN” というイベントにおいて なんと! ニナ・ハーゲン!!が “アヴェ・マリア” を唄うシーンが挿入されている。 う〜ん……なんだか凄い。うまく説明できないが、凄い…。

(ここ以外にもビデオ?映画?上映用スペースもあるようだった。 暗室ぽくなってました。時間無く見られず残念ではあった)

上のフロアでは、ベルリンの壁をモチーフとした絵画や彫刻などが展示されている。 同時に、世界中の国々における人種問題・政治問題とそれをめぐる闘争が パネルをもちいて展示されていた。ちゃんと日本についてのパネルもある。

遠い国のそれらの問題に心動かされながらも (それは大事な事だと思う)、 自分にとっての現場たる日本においてのそれを 同一の視野でもって見ることができぬ、 もしくは見ることを避けようと (すら) する私たち多くのこの国に住む者には―― よい機会になるといえるかもしれなかった。

アメリカもインドも南アフリカも東欧も他の諸地域も――そして日本も。 実は、直接にとるカタチや語るコトバは違っても、 全て同じことを伝えようとしている闘いなんですよ、と再認識させる。

その何れもが “例外” でも “特殊” でもないことを知りなさい、と 言われているようですからね、まるで。 ここに展示されている問題すべてに実は共有する “何か” があることに気づけば 自ずといままで見えなかった世界が見えてくるのだ、という仕掛けがあるのかも。

その裂け目のカタチがどれだけ多種多様であろうとも、 それが裂け目であることには違いないのだろう。

しかし、他国人に言われちゃ世話はない…というもんですが、まったく。んがっ。

そして、そのフロアの脇にある例の階段で下へ下りると、 例のカフェのあたりになるわけです。

⇒ SITTIN' ON THE FENCE 2

petty cashbook
入場料 4 DM 壁博物館

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