目醒めてみれば 何処か遠く

twentysix hours to roll

■ 09/14-09/15 パリ→リスボン

■ さよなら パリ

辺りに響くのは自分達の靴音と声だけだ。 町ごと今だ眠りについているよう。 早朝のパリはシンとしている。ひんやりとした風。

ホテル・マリニョンを最後にもう一度、その表玄関と向かい合うようにして眺める。

今朝は早起きしなくてはいけなかった。早朝のSud Expressに乗り込むためだ。 昨夜、宿のスタッフの一人、大柄なブルネットの女性から為すべき手順は聞いている。 彼女はマリアンヌと違い、おっとりとしたタイプだ。 部屋の鍵をレセプションの所にある傘立ての中に落とし入れていけばいいらしい。 朝食用としてオレンジジュースのボトル(但し、美味しくはない)と 輪切りにされたライ麦パン一塊を袋詰されたものが用意されていた (もしかしたら昨夜説明時に渡されたのかもしれない)。 いつもの美味しいバゲットだったら嬉しかったのだが、と少し残念。

名残惜しい気がして、少々センチメンタルになる。 良いことづくめでも何でもないのに。 さようなら、二人が大好きだったパリの安ホテル。 あの7階の屋根裏部屋にはもう帰ることはできないんだな…。

…なんて、カッコつけてなんかられないのが、我々の旅。 最後の最後までこの町はやってくれる(?)。 ホテル近所のバス停からオーステルリッツ駅方面へのバスが出ているので、 重い荷物の事も考え利用する心算だった。

バス停で待つ。待つ。そう、待っている…。
ばかやろ〜〜〜!! 何で来ねぇんだよっ。

結局、又荷物を背たらい最寄のメトロ駅へ向かう羽目になる。 そうおなじみのMaubelt MutualiteからGare Austerlitzへ。

■ まだまだ序の口

ホームにはすでに列車は入っている。 何処も同じで早朝の駅は人の姿が多い。 列車を横目にホームの売店で食料を調達。 いかにもまずそうなジャム入りドーナツ(しかも本当にまずい)と Vittelの小瓶(Vittelしか置いてないのが個人的には辛い)。 文句いうぐらいなら他のものを、と言われそうだが、実際これぐらいしか置いていないのだ。 しかしボッてるとしか思えん金額だな。 駅内&早朝という他に選択肢が無い事知った上での殿様商法なのか?

Sud Expressはパリとリスボンを結ぶ国際列車だ。 乗り込んだSNCFの車両は綺麗で現代的というところ。 中はコンパートメント形式、6人用の個室になっており 3人がけ用のソファが向かい合う形だ。まぁ定番ですね。 コンパートメントにつけられた番号を見て自分たちの部屋を探す。 見つけたそれの一番通路側向かい合う席が我々のシートだった。 フランス人らしい中年の夫婦が同室のよう。 8:40頃、さぁ出発。何とスペインを通り抜ける26時間にも渡る旅の始まりだ。

走り出すと間もなく車窓には緑の田園風景が広がり始める。 “へぇ〜”と思うも束の間だった。 何故か。即寝てたのだ、二人して。 日々の疲労に加えての早起きの効果は覿面だったらしい。 何よりも列車の振動は人を眠りに誘うに充分なのだ、 あれも1/fのゆらぎなのだろうか(←勿論思いつきで言っている)。 車窓の美しさは重々理解ってはいるのだが、 とにかく努力しても1分と目を開けていられない体たらく。 それでもボルドーに着いた時のことはぼんやりと覚えている。 何人かが降り、家族なのか人々がそれぞれホームで出迎えている。 辺りには緑があふれ、空は青く高い。みなの顔には笑顔が。
“ここはワインで有名なところだったなぁ”
と思ったその次の瞬間にはまた寝入っていた。

16:00頃、フランス・スペイン国境のirun(イルン)に到着。 ここで一旦列車を降り、駅舎内の一室で出入国審査が行われる。 殆どベルトコンベア並みの流れ作業。 ほぼノーチェック。赤いパスポートがチラと目に入るなりOKだとさ。 せめてスタンプくらい押してくれよ、と思う。

■ ここも国境の町

埃っぽい空気だ。

我々はイルンのホームにて次に乗るべき列車を待っている。 今まで知らなかった空気の色。駅周辺のムードもフランスとは全く異なる。 周りで同様に列車待ちする人々の顔も違っている、スペイン人らしい。 フランスは空気にみずみずしさがあったのだと思う。 何故そう思うのかと言うと、今見る空気は枯れた味わいがあるからだろう。

17:25 イルン発。ここからはスペイン国鉄(RENFE)に乗り換える。 重々しくも垢抜けない。しかもちょっとボロい風。ちょっと野暮ったいとこがナイスだ。 乗り込んだら乗り込んだでナイスだ。まず、空調は無い。 車両に一歩足を踏み込むや否や押しよせるムンとくる匂い。これは汗の匂いだ。 くらくらっとするがなんのこれしき負けてはいられない。

空いたコンパートメントを見つけ中に入る。 …ここ1等の車両だ…よね? 正直きれいとはいいがたい。 が、めげたりしない。 一晩を快適に過ごしたい気合の入れすぎで、夜に備えていきなり窓のカーテン閉めてしまった (通路側のコンパートメントの入口はガラスでカーテンがついている)。 今にして思うと、これって顰蹙のような気がする (実際帰国後会ったヨーロッパ旅行経験ある友人にはヲイヲイ…と言われましたです^^;)。 勿論、車両の混み具合にはちゃんと注意を払うようにはしていた。 混んでいるのに自分たちだけで個室を占有するをよしとは思わない。 ただシートに余裕があるなら極力それを許してもらおう、といった塩梅ですね。 今回の移動は、終始混む事もなくコンパートメントにも余裕あったようで幸いでした。

隣り合うコンパートメントからはスペイン語が響いてくる。 もうフランスは終わった。スペインが始まる。

夕方という事を割り引いても、心なしか日差しが強い気もする。 個室内はえもいわれぬ芳香?が漂っている。 が、何てことはない、直に慣れてしまう。そんなもの。

■ 謎は謎のまま列車は行く

ガタンッ。

走り出したと思ったものの、しばらくするといきなり列車が停まる。 何なんだ、いったい。 そしてすぐにまた走り始め…ないのだ、これが。 窓から身を乗り出すようにして外を伺う。 駅でもなんでもなく、まさに続く線路の真っ只中。 もちろん、何のアナウンスも無い。あったところで理解るわけもないのだが。

まぁ、直に動き出すだろうと高を括っていたら、甘かった。 何故なのか全くコトンとも動く気配すらない。 なんとなく“スペインだしなぁ”と納得して不安を感じない自分たちも呑気者。 だいたいスペインらしさの根拠など何処にも無い、これから初めて行くというのに。 気づくと、何人もが列車から降りて線路端でのんびり寛いでいるではないか。 それは殆どひなたぼっこ状態。負けた…。 焦って理由を探したところで仕様がない。 動く時は動く、ならば動くまで待とうホトトギスの心境に。 20分程?すると、また何の説明もなく突然動き始めた。 くそ暑いRENFEの旅はまだ始まったばかりだ。

■ 太陽の大きさについて考えてみる

同じ“田舎”という言葉を当てるにも関わらず、こうも違うのだろうか、 国境を隔てただけなのに。それほどフランスとスペインのそれは違う。 気づくのは妙な懐かしさを覚えてしまう事だ。 凄く日本的なのだ。日本の農村、それも山間、その風景の色に非常に近い。 奇妙な相似ではあるのだが…。道理で何処かで見たことあると思った。

特筆すべきは沈みゆく夕陽だろう。 ああも冗談みたいなくらい真っ赤で、 かつ比喩でなくマジに物理的に大きな太陽を眼にしたのは生まれて初めてだ。 どうしてあんなに大きいのだろうか?スペインの謎だ。 もしかすると緯度とかが関係するのかもしれないが。

駅を一つ過ぎる毎にスペイン語が周りのコンパートメントや通路から聞こえてくる。 今までと全く違う世界が自分たちを待っているらしいと再確認してゆく。 前夜、宿でもらったパンが今宵のディナー。まずい…(泣)。 その不味さがライ麦パンを苦手とするゆえのものなのか、 果たして不味いもんは不味いというものなのかは解らない。

車窓からは夜の闇だけが続いている。 駅の近くに思える教会がライトアップされて、 漆黒の闇の中でそこだけが青白い光を放っている。 思わず見とれるほど綺麗だ。ブルゴスの駅だったかもしれない。

さあ、夜も更けてきた。 明朝9:30頃のリスボンはサンタ・アポローニャ駅到着まで一眠り。 コンパートメントの肘掛を上に押し上げる。 各々シートをベッド代わりにして横になる。 ぶんぶんと蝿が煩い。寝ていると顔にたかるので困りものだ。 でも、もういちいちはらうのも面倒だ。 たかるならたからしておこう。

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メトロ カルネ #10 Maubelt Mutualite - Gare Austerlitz
ジャムパン? FF 26? 駅内売店。はっきりいって不味い
ミネラル水(小瓶) 駅内売店

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