紫色の靄がかかった世界で
(もし これを世界と呼ぶのならば)
あなたはずっと そこに佇んでいた
あるときは 穏やかに腰をおろし
長く伸びたその足を折り曲げて
あるときは 穏やかに微笑みながら
長く伸びたその指をポケットに入れて
(そのポケットの底に宇宙があると信じていた)
そして わたしはといえば
あなたの頬にうかぶ
ほくろの数さえいつしか覚えてしまったのに
だのに あなたの瞳を
まともに見られないでいる
いまでも
白檀(sandal wood)の香りに少し咽て
(たぶん 何処から香るのかは憶(し)っている)
全ての呪文は溶けはじめ
祈りの言葉さえ闇に同化する
だのに あなたはそこに佇んでいる
まるで誰かが見つけてくれるのを
静かに確信して待ってるかのように
(夜啼鳥をその左肩にのせている)
たぶん わたしに云えることはといえば
わたしは あなたを憶(し)っている
あなたは わたしを憶(し)っている
それは きっと大爆発のとき以来
砕け散る破片(はじまり)が
暗黒の闇の中から飛び散っていったことを
ずっと忘れていたのに
あなたの姿をそこにみとめるまでは
どうやら___
白檀に酔ってしまったのだろうか