ほら 見てみろよ あの男
さっきからずっと あそこでああしてる
マドリッドの逃げ場のない 白い日差しの下で
ただじっと 身じろぎもせずすわってる
ほら 見てられないぜ あの男
奴の前においた アイスクリーム眺めてる
さっきすぐそこのスタンドで あの金髪女から買ったのさ
ただじっと 触れもせずすわってる
教えてやろうか
あの男はアイスクリームになっちまう自分を夢見てるのさ
ただ見つめつづけて願うことつづければ いつか
バニラの香りにつつまれて ともに融けてゆけないかと
マドリッドの強すぎる午後の太陽が ほら
奴とチョコチップの入ったバニラアイスをてらしつづけてる
かつて同じように アイスクリームをみつめつづけた男がいた
そして 本当にアイスクリームになって融けて消えた
会ったこともない 俺のおじさんが昔話してくれた
きっと奴も そいつみたいになりたいんだろう
ほら 見てみろ 汗まみれでなのにまだ 静かにすわってる
誰か かわいそうなあの男に言ってやってくれないか
無駄なことはやめたほうがいい おまえにはまだ時間はあると
気がつかないか あの全然融けないアイスクリーム
そこには例の男が閉じこめられてる だから永遠に融けない
きれいさっぱり解けて消えてしまいたかった男は
アイスクリームの中で生きつづけねばならないと知らなかった
永遠なんてくそくらえと思っていたのに なんて皮肉な結末
ほら あの真昼の太陽のしたですら融けないアイスクリーム
やつは いままでもこれからも ずっとそこさ
ほら 見てやれよ 叶わぬことすら知らぬあの男
永遠に融けないアイス 永遠にあの男も融けることは許されない
誰かあの男に 俺にかわって言ってやってくれないか
アイスクリームの中でただ いまもありつづける俺にかわって
2003.07.05.