星降る夜が 3時を告げる
窓から射しこむ月の光を浴び
巨大な扉に姿かえた鏡台の前で
月の光だけが射しこむ 午前3時
真新しいガラスの靴にそっと足をすべらす
紫水晶の布を素肌に纏って
扉の前で呪文を3度つぶやいてみる
何処かで鈴の鳴る音がしたら 鍵を閉めて
そっと 静かに瞳を閉じて
ラヴェンダーの匂いに身をまかす
水先案内人が手をとってくれたなら
またそっと 瞳を開く
そこは 金色に光るゴンドラの上のはず
水面に浮かぶ幾百もの星の群れ
長い髪をそっと浸してみれば
星たちが愉快そうにおしゃべりしてるのが聴こえる
水面にひろがりたゆたう髪のなかで
きらめきながら 星の子たちが踊る
果てなくつづく運河をくだってゆこう
ゴンドラに乗って耳澄ませれば
ウンディーネの唄が聴こえだす
過去も未来も現在も
全ての時間の約束事のない運河の上
ゴンドラは月の光でゆらめき進む
果たして何を夢見よう
今宵 水晶の月のもと
ゴンドラを漕ぐ音だけが響くなかで
水先案内人は穏やかな笑みを浮かべて
ときおり 遠くを見つめるような瞳をしたあと
かならず 少しはにかんだように笑い舵をとる
背ぃ高のっぽの案内人は
心に響く 何故か懐かしい声で
問わず語りに 星の神話をはなしだす
星が降る夜のなかを
いつまでもつづく運河の上
金色のゴンドラに乗って 星の記憶に髪を揺らす
寡黙な案内人の影がのびてゆく
握りしめた左手を ゆっくりと ゆっくりと
なにものにも気づかれないよう
冷たい水に潜らせてゆく
みっつ 数えたら そっと 手をひらげてしまおう
沈んでゆけ ゆっくりと沈んでゆけ
鈍く光をたてながら 何処か深くおちてゆく鍵
さようなら さようなら
ゴンドラに頬づえついて 瞳を閉じて
声にならない声でつぶやいてみる
水晶の月の光のもとで
色白の長い睫毛をした案内人は
静かに 唄いはじめる
それは 今まできいたこともない 不思議な唄を
懐かしくよく響く声で 少しうつむきかげんにはにかんで
それでは 耳を傾けるとしましょう
水晶の月の光を浴びながら
今宵はそっと瞳を閉じて
水晶の月のカケラでできた
ちいさなゴンドラに揺れて