いつもと変らぬ退屈な宵の方に
せめて背をのばし顔を空へむけることで
幾ばくかの身にまとわりついた鉛の跡を落とす
何処かの小学校からは懐かしい音楽が流れ行く
さあみんなおうちへ帰ろう
きっと暖かいばんごはんがじきに始まるからと
小学校の古びた校舎を夕焼けが赤くてらして
校庭に鉄棒が影をつくるのを眺めてる
そばには赤く小さな体育帽がぽつんと落ちている
まだゴムが白く真新しい帽子が落ちている
鉄棒で逆上がりをやめない少女の頬は真っ赤だ
口元をきりりとしめた少女がくるくるまわる
帰るところなどないあの子の赤いランドセルは
何処かで見た気もするけれど思い出す必要もない
ジャングルジムのてっぺんで遠くを見てる少年
手についた錆びを白い体操着でこすりぬぐう
掌に残る錆びの匂いにどこか悲しそうだ
口元きりりとしめた少年が足をぶらぶらさせてる
帰るところなどもう探すことをやめた膝小僧の擦り傷は
何処かで見た気もするけれど忘れるには理由があるのだろう
鉄棒の影だけがのびている
ジャングルジムだけが要塞のような影をのばしてる
やあ
ここでしばらくひとやすみしていっていいかい
ああ そうだよ
気がついたかい
わたしもまた 影をなくしたものだよ
きみたちとそうさ 同じさ