埋められるのを 待っている
深く深く この世の始まりよりも まだ奥底へ
この身沈められるのを 待っている
太陽は 三日間 沈まなかった
鳥は その間中ずっと 羽ばたき続けた
当たらないと評判の占い師は
この世の終わりを喧伝したが
今更彼を相手にするもの ひとりさえなく
案の定 その結果は その名に恥じないもので
ありがたくない称号は 揺るぎないものとなった
その後 月は 七日間
闇とともに その肢体を横たえ続けた
埋められるのを 待っている
何時から待ち続けているのか 忘れるほどに
何故なのか 今はその理由すら思い出せないままに
夜に散歩をしていると
町のはずれの 四辻で 鈍く光るシャベルの槌音
湿った地を掘る連中を見つけた
男たちの背丈ほどはあろうかという泥の山
わたしを埋めるにちょうどいい穴らしい
連中に指示するあの男には見覚えがある
昨日の昼間に わたしの手を
その両手にて握りしめた あの影のない宣教師
まったく同じ髭をたくわえていたはずだ
そうか あの男か
何がどう 納得できる理由でもないが わたしは頷く
私は 埋められている
とても 注意深く とても 深く
もう 何も聞こえもしない
聞こえるのはただ
地を掘り進む 虫たちの音と
この身体が 土に融けゆく音だけらしい
もう どれほど経つのだろう 埋められてから
何故 わたしは記憶に 未だ囚われているのだろう
もう どれぐらい 私の肉は 土に失せだしたのだろう
ああ 小さな石の欠片と 幾分湿り気帯びた土が
わたしの何かに そっと触れてくる
どうやら少し わたしの骨は 顕わになりつつあるようだ
何故 わたしは感覚に 今も繋がれているのだろう
とても静かな 底という闇の中で
静かに絶え間なく わたしの肉体が融けてゆく音
なんのへんてつもない 土へ戻る音
ああ あとどれぐらいすれば
骨もみな 融けてしまえるのか
いま 融けゆく音は どの骨なのだろう
埋められるのを 待っている
深く 深く
かつて 海の底だったに違いない 地の底へ
埋められるのを 待っている
2002.7.19.