あれは もうだいぶんと昔のことだから
何時だったかは忘れてしまったけれど
あなたと夕焼けを見ていた
ふたりならんで赤くなる世界をながめていた
手をつないで
わたしは夕焼けが大好きだから
あなたといっしょにそれをみていたいと思った
わたしがキレイだね、と思わずつぶやくと
あなたはそうだね、でもなんか怖いな、とつぶやいた
あなたは何か他に考え事があるような横顔で
しばらくそれから黙っていた
落ちてゆく夕陽がそれをてらしていたことを
わたしだけが知っているんだと、なぜか思った
あなたは 夕焼けがとても好きな人で
なのに いま夕焼けにふたりしてのみこまれながらも
わたしの夕焼けと
あなたの夕焼けは
全然違うんだとわたしはしらされてゆく
なぜだかとてもさびしくてやるせなくて
みにきてよかったね、と
あなたはいつものような笑顔で
そんなわたしの方をふりかえる
あれは もうかなり昔のことだから
何時だったかはよくは覚えてはいないけれど
あなたと夕焼けを見ていた
ふたりならんで赤くなる世界をながめていた
やっぱり手をつないで
わたしは黄昏てゆく時間が好きだから
あなたといっしょにそれを過ごしたいと思った
わたしは 空ばかり見ていた
あなたは てらされたビルばかり見ていた
ふたりでとても綺麗な夕焼けだったね、と頷いた
でもふたりは全く違う景色をながめていて
わたしとあなたの夕焼けはべつものだと気づいてた
正直言うと わたしは他に考え事があったので
あなたの笑顔に少し曖昧にテンポ遅れて頷いた
ヘンなやつだなぁ、と
あなたはいつものような笑顔で
そんなわたしをからかった
そしていま
わたしは今日もあなたと並んで夕暮を待っている
夕焼けの大好きなふたりは
かつて何度も繰り返したのと同じように
夕焼けを見ている
ふたりならんで赤くなる何もかもをながめていた
手をつないで あの日と同じように
あまりに凄まじい夕焼けの空に
ふたりは同じく声をなくしていたのだけれど
私はちゃんと知っている
わたしが声をなくした理由は あなたのそれとは違う
あなたが何もいえなくなった理由は わたしにはわからない
でも それはとるにたらないことだ
私はもう 何も悲しくもやるせなくもない
わたしには 私だけの夕焼けがあるのと同じように
あなたには あなたにしかない夕焼けがある
例えふたりを赤くそめる夕陽はひとつでも
わたしはあなたと眺める夕焼けが好きだから
夕陽がウィンクしてるみたいだね、とあなたは笑う
両目を閉じて笑う夕陽のことを話そうと思ってた わたしは
うんそうだね、とつられて笑う
だけど わたしの気持ちはとてもスッキリしている
いまも 全く変らないあなたの笑顔が 夕焼けでそまってゆく
ねぇ、今日はこのまま手をつないで帰ろう
夕陽が沈むまでずっと 懐かしい唄を口ずさみながら