おぼえているかい?
ねぇ
おぼえているかい、ジョン
おぼえていてくれるかい?
ねぇ
あのときのことを
そして
あのときの波打ちぎわの女の子のことを
かのじょはいつも砂でお城をつくっていた
よくある話さ そうさ
いつもひと言も口にすることもなく
ただ 目の前の砂の城だけを見つめながら
ちいさな指にねばりつく砂の感触だけが
あのことこちら側をくっつけていたとでも思ったのかい?
ねぇ まだおぼえていたなら 教えてくれよ ジョン
だから あのこの砂のお城を崩し続けたのかい?
あのこは壊されるたびに
何かを噛みしめるよう それでもまた砂をこねた
どんなに離れたところにいたって
きみは またどこからかやってきて
そして お城をそのたび崩した
崩れた砂はそして 波の藻屑と消えていった
ねぇ ジョン
きづいていたかい
彼女は彼方へ流される砂のローブを
悲しさと同じくらい ほっとした気持ちで眺めていたことを
いや、きづいていたはずだ
だからこそ
きみは 律儀なまでにいつも崩しにきてくれたのだから
ねぇ いま何処にいる?
君が消えてからもうずいぶんと経つんだ
砂のお城だらけなんだ
波打ちぎわは かちんかちんに固まった城で埋まってしまってる
まるで防波堤のようだ なのに誰もきづかない
海のしずくすらしみこむことができない そんな砂の城壁さ
なのに まだ砂の城をしゃがみこんで作りつづけてる
あのこに 見覚えあるだろ?
崩しにきてくれないか
あの日のように
見上げると太陽の光をうけたその癖っ毛な金の髪は
なぜか時々赤くも見えたっけ
そんな少し雀斑なジョン
いつも君の過ぎた後には 風が吹いた
壊した砂を慈しむよう清める風が
君が崩してくれない砂の城は風の吹かない廃墟
おぼえているかい?
ねぇ
おぼえているかい、ジョン
おぼえていてくれるかい?
ねぇ
おぼえていてくれるなら__
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